近年、建築資材の高騰や職人不足などにより、建設費は全般的に上昇しています。建設費は、物価とも強い相関関係があり、2023年からの物価上昇に伴い、建設費もさらに上昇し続けています。また、建設費高騰の影響で建替え後に経営不振に陥る病院が増加傾向にあり、建て替えになかなか踏み出せないケースも増えています。こうした状況から、病院の建て替えの必要性に迫られながらも、計画を実行することが難しい病院が増加しています。そこで本記事では、最新の「病院建設費の動向」や、「建設費を構成する要素」「資金ギャップを埋めるためのポイント」について詳しく解説します。病院の建設費用の推移と建築単価の動向独立行政法人福祉医療機構 の「2022 年度 福祉・医療施設の建設費について」のリサーチレポートによると、2022年度の病院建設の平米単価は 409千円/㎡で、前年度から14千円/㎡低下しました。2011年度以降、上昇傾向は鈍化しつつも、病院の平米単価は依然として高い水準にあります。また、2013年度以降の10年間をみると、病院の平米単価は1.71倍となっています。参考の目安としては、地域や病院の機能にもよりますが、一般病院では45万円/㎡~50万円/㎡、リハビリ病院・療養型病院で40万円/㎡~50万円/㎡程度となってきています。また、弊社が関わってきた建替えの事例からすると、実勢価格としては、55万円/㎡となるケースも見受けられます。ただし、建築単価については、明確な低下傾向にはないので、今後の動向について注意する必要があります。定員1人当たりの延床面積の推移病院の定員1人当たりの延床面積の一般的な水準は、病院の種別にもよりますが、2022年度で57.6 ㎡と前年度から 7.4 ㎡低下しました。一般的な面積の水準としては、病院の種別にも寄ります が、1 人当たりの延床面積は、 200床未満の一般病院で50~65㎡、200床以上の一般病院で60~80㎡となります。リハビリ病院や療養型の病院では40~50㎡となります。病院の1床当たりの建設費病院の 1床あたりの建設費は、先ほどの建築単価と定員1人当たりの延床面積から2022年度で23,558千円/床となります。これは前年度から790千円/床低下しましたが、依然として高止まりしています。また、病院建築の1床当たりの建設費が低下した要因については、2020年度~2022年度の一般病院、療養型病院、精神科病院の類型ごとのサンプル割合の推移をみると、2022年度の一般病院のサンプル割合が、58.3%と前年度から 21.7 ポイントも低下しました。したがって、2022 年度における 1床当たりの建設費の低下は、一般病院のサンプル割合が相対的に低下したことが一因であると推察されます。ただし、弊社の関与事例や金融機関、建築業者との情報交換の中では、建築単価は、明確に低下傾向にはないため、先述のとおり、今後の動向については注意が必要です。建設費はどのように決まるのか規模(面積)に影響を与える主な要素としては、外来や診療機能(診察室、処置室、検査、放射線、薬局など)、個室数、手術数などが挙げられます。一方で、建築単価に影響を与える要素としては、構造の違い(鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造)、耐震構造と免震構造の違い、資材や労務単価の影響、業者の選定などが挙げられます。この規模(面積)と建築単価をいかにコントロールできるかが建設費を大きく左右します。ただし、実際には建築単価については、業者選定などにより可能な限り単価を抑えるように進めることが可能ですが、資材や労務単価などの単価に大きな影響を与える外部環境の要因はコントロールができません。そのために、実際に建替えの計画を進めていく際には規模(面積)において、事業戦略に応じた機能の取捨選択をして、建設費の検討を進めていく必要があります。病院の建て替えで利用できる補助金病院の建築または改築には大きな費用が必要です。しかし、政府や地方自治体から提供される補助金を利用すれば、その負担を軽減することが可能です。例えば各都道府県では、厚生労働省所管の補助金等を活用して、医療機関が行う施設・設備の整備や施設の運営に係る補助を行っています。主に活用される補助金や交付金は「医療施設近代化施設整備事業」「医療施設等耐震整備事業」「地域医療介護総合確保基金」があります(令和4年12月現在)。補助金を利用するためには、該当する補助金の募集要項を確認し、必要な書類を準備して申請を行う必要があります。ただし、補助金を利用する場合は申請までに時間がかかり、また、入札による業者選定が必要となるため、入札後の資材発注により工期に影響が出ることが想定されます。そのため補助金を利用する上では、「交付金の見込額」「スケジュール」等を考慮して検討してください。資金ギャップを埋めるためのポイント病院建築計画を立てる上では、まず、建設費を正確に見積もることが重要です。これには、土地代、建物建設費、建物取得関係費(税金等含む)、旧建物の取り壊し費用、医療機器および備品等整備費、情報システム整備費、移転時の引っ越し費用などが含まれます。次に、資金ギャップを埋めて病院建設計画を実現性のあるものとするための方法を考えます。これには、経営改善、建設費の圧縮、資産所有形態の検討、補助金/交付金、資金調達活動などが考えられます。これらは建替えの検討開始時から着手可能であり、取り掛かりが早いほど、その後の進捗度が大きく変わります。基本的に正攻法としては、経営改善により病院建設のための原資を増やしていくことが考えられます。建設費の圧縮については、基本計画段階までは建築面積の圧縮が資金ギャップを埋める上で有効となります。経済効果としても大きくなりますので計画段階で検討を行うことが効果的です。このように、早期に病院建て替えに係る費用を把握して、対応策を検討していくことが、計画の実現性を高める上で重要となります。建て替えの実現可能性を検証するためのシミュレーション病院の建替えは、その後も経営が成り立っていくのか長期的視点で考えることが重要です。まずは、シミュレーションを活用して、実現可能性を検証してみましょう。シミュレーションを行うことで、計画の妥当性を確認することが可能です。下記「シミュレーション用登録フォームへ」をクリックすると、シミュレーションの登録フォームへうつります。財務情報と病院建て替えに係る概算事業費から、現在生み出しているキャッシュフローと総事業費の資金ギャップを確認しましょう。さらに、万が一の状況を想定して検証することも可能なため、予期せぬリスクに対する対策を立てることもできます。しかし、そのためには適切なデータとその解析が必要です。私たちは、具体的な根拠や対案を提示して、建替え後もしっかりと前に進んでいくよう、新病院開院後に実現性の高い事業計画の策定をご支援します。経営改善のコンサルティングや病院建替えに関する長年の経験と、改善ノウハウに基づいた収支シミュレーションを実施します。病院の建替えを検討しているが、今のプランで経営が成り立つか不安なので検証してほしい、過剰な投資とならないよう予算内で投資コントロールしたいなど、ご要望やお悩みがございましたら、私たちがサポートいたします。お気軽にお問合せください。