金融機関からのご紹介でコンサルティングを行ったA病院。年間の医業収益45億円に対して借入金が75億円に達している状態でした。経営が非常に厳しく、「事業再生を進めるために経営改善の可能性を含めた経営改善計画を作成してほしい」という金融機関からの依頼で、支援を開始することとなりました。問題の要因は、明らかに病院建築時の過剰投資建替え前に、計画をチェックし「建替えは難しい」というアドバイスをしたものの、受け入れてもらえず、他のコンサルタントを入れて建替え計画を進めてしまいました。そして数年後には、返済困難な状態に陥ってしまいました。①土地を先行して購入A病院では、十分な検討をしないまま、場所がよく広い土地が見つかった時点で購入してしまいました。さらに、そこに建てる建物の建築費用にもお金をかけすぎていました。②建物や医療機器への大きな投資医師数の不足などにより、急性期機能に課題があるなかで、建物や医療機器への大きな投資を行い、予定通りに設備が稼働せず、急激にキャッシュフローと借入金返済のバランスが崩れ、経営状態が悪化していました。A病院では、めいっぱい病床稼働率を上げても十分な返済が収入予測と投資額が現実に見合っていなかったのです。事業再生という手段A病院は、建替えにより返済できない状況であったため、事業再生という手段をとることになりました。そこで私たちは現状の経営状況と将来の経営改善の可能性を把握するためにDD(due diligence:デューデリジェンス)を行いました。主に実施したのは、事業と財務のDDです。外部環境分析(政策動向・地域状況など、需要状況を分析)内部環境分析(損益状況や診療機能、物的資源の分析)財務状態から損益計算書の数値の適切性や、貸借対照表の資産と負債の実態調査経営計画の策定(法人理念の明確化・経営改善計画)経営改善策の検討、改善活動金融機関との折衝建替えることが目的ではないA病院の経営改善計画では、経営が正常化するまでに10年程度の期間を有しました。その間は、特に人件費面の制限や設備投資の上限額は大きな影響を及ぼします。いったんこのような状態になってしまうと、金融機関との条件に縛られながら経営を継続していかなければなりません。問題のある計画に対して、あえて「建替えではなく、違う方法を考えましょう」「いまはストップして、時期を待ちましょう」と言えるのは、私たちコンサルタントや顧問税理士といった職種のみです。そして、このような状態をなくすことも私たちの重要な役割であると考えています。