C病院は、約150床クラスの公立病院です。開設から約40年近く経過し、施設の老朽化が著しく、年々修繕費用が増加していました。5年ほど前に、応急処置として約2億円をかけて修繕工事を実施しましたが、突発的な給排水管の破損やボイラーの不具合がしばしば発生している状況でした。C病院は、公立病院であるため、建替えする際は行政や地域住民などの関係者への説明と同意が必要です。そこで、既存の建物を使用し続けた場合の修繕費の将来予測に関する調査を行いました。その結果、数年先には大規模な修繕が発生する可能性が高く、本格的に建替えの検討を開始しました。検討を進めるための体制を構築実務担当と意思決定の機関を分け、資料作成や関係者の調整などの実務は事務職員を中心とする「病院建設事務局」が担当しました。病院の意思決定に関する内容(院長、副院長、看護部長、医療技術部長、事務長)基本計画に関する内容(最終的には建設委員会が判断)部門間での意見調整が必要な場合などは、建設委員会で方向性を決めてから、各部門の責任者と調整を行う仕組みとしました。C病院の移転候補地が高い丘にあり、土地の一部がかなり傾斜がある坂とつながっていました。そのため、大規模な造成が発生する可能性があることから、設計事務所にも一部業務を委託し、行政の担当者を建設委員会の委員に加え、その後の検討がスムーズに行える体制を整えました。現状の課題と新病院の基本方針基本計画策定にあたり、現状の課題を整理しました。課題の整理(取り巻く環境の分析、マーケット、受療動向、経営状況)新病院の基本方針と主要機能の検討医療機器整備計画、自院配置計画などの策定基本方針、主要機能が決まったら、医療機器整備計画、システム整備計画、人員配置計画、部門別計画などの策定へと議論が進んでいきます。事業計画、基本計画の取りまとめ整備計画を立てる、建設事業費および財源、事業収支試算、複数の数値パターンを作成、機能削減の検討コンサルタントが第三者として入ることで検討がスムーズに公立病院という組織の特性上、どうしても利害関係者が多いため、各関係者への説明と同意を得ながら建替えの検討を進めていく必要があります。また、一般的に、機能の追加に対する強い反対意見は少ないのですが、機能の縮小や廃止に対しては、関係者から強硬な反対意見が出ることがあります。建替えなど大きな組織再編を含む意思決定は、感情的な部分や日常の人間関係などの影響もあり、病院内の関係者だけでは調整が難しい場合もあります。その場合、コンサルタントが第三者としてデータを提示しつつ明確に説明することで、検討がスムーズに進み、予定通りに新病院が完成しました。