B病院は約450床の急性期病院で、施設の老朽化、災害対策などの必要性から建替えを検討することになりました。病院は、県の中心部にあるため現在地で建替えることが検討されていました。しかし、建物が密集しており、現地建替えを行う敷地の余裕はなく、現在の海抜も問題になったため、移転建替えを行う方向で調整が進んでいきました。当初は、新病院の方向性や救急医療への注力といった具体的な方針などが検討され順調に進んでいましたが、院内に建替え経験者がいないこと、一部のスタッフから強い反発もあり、意見を集約できなかったことから計画が進みませんでした。方向性に関するポイントを具体化していくなかで、進め方がわからず、話が進まなくなっていました。また、建築費を試算してみた結果、費用がかかりすぎる、返済できなくなるという不安から、私たちにご相談されました。意見の集約ができていなかった計画が途中で中断してしまった理由を整理しました。まず、メンバーの問題に注目したところ、「どのメンバーが何について検討するか」が決まっていないことがわかりました。これでは、具体的な検討をする段階になったときに、スタッフ間の思惑が異なるため意見の集約ができず、話が前に進まなくなるのです。検討するメンバーおよび検討する内容を整理トップレベルの検討メンバーは院長と事務部長です。大枠の病床数、機能面、総事業費などについて決めます。その次のレベルの検討メンバーは、各部門長とします。各部門の運営方針、集患などに関する事項を決めていきます。その次が、各診療科長、病棟師長たちです。運用面などの細かい話を詰めることにしました。基本構想の見直し外部環境分析(高齢化率、県の保健医療計画、外来患者数の推移、平均在院日数の変化など)基本構想の検証を行うべく、外部環境の分析と将来予測を実施。内部環境分析(経営状況)SWOT分析基本構想(新しい病院の方向性)分析結果を踏まえて、基本構想を練り直し。基本計画の検討事業計画シミュレーションの検討院内での合意を得ることで、計画の実現可能性が向上B病院での事例は、病院側が独自で基本構想の策定まで進めていました。しかし、分析の結果、初期数値の見込みの甘さや過大な総事業費の想定、それらを見直すための院内調整などが、病院単独では難しい状況となっていました。支援を行った結果、現況の的確な説明、適正な病院の規模設定と根拠、投資額の適正化などを提示して院内での同意を得ることができました。現状から大きな変更を伴う意思決定がある場合、内部から反対意見が噴出し、調整に多くの時間を要することがあります。しかし、外部のコンサルタントを活用することで、データに基づく客観的な見解を伝えることができるうえ、大幅な変更に伴う多大な労力を要することなく、最終的に関係者の納得を得ることができます。